劇団☆新感線プロデュース Inouekabuki☆號 『IZO』  青山劇場

作:青木豪
演出:いのうえひでのり

主な配役

岡田以蔵   森田剛
ミツ     戸田恵梨香
武市半平太  田辺誠一
島村源兵衛  千葉哲也
勝海舟    粟根まこと
坂本竜馬   池田鉄洋
田中新兵衛  山内圭哉
山内容堂   西岡徳馬
寅之助    木場勝己


『月刊Theatre Guide』掲載のいのうえひでのり氏のインタビューに拠ると、「いのうえ歌舞伎」は05年から“第二章”に入っているそうで、つまりは、派手なけれん味やカタルシスはもうお終いにして、“人間劇”を志向する第二段階に来ているそうだ。
その流れの中での今回の上演作、『IZO』。IZO、すなわち、幕末の京都で恐れられた“人斬り以蔵”こと岡田以蔵が主人公となる作品。
主演は、『荒神 〜Arajinn』以来の新感線出演二作品目となる、ジャニーズ所属森田剛くん。いのうえ氏が森田くんに再度出演して欲しくて、その際に浮かんだ人物が岡田以蔵だった、と言う。

ジャニーズ主演なのでチケット入手は相当難しいだろうと思っていたところ、仕事場の元後輩が事前に声を掛けてくれて、V6ファンクラブで一枚ゲット。同じ頃、新感線FCでも抽選が有り、二回分のチケットに運良く当選。しめて、三回も観劇可能と成った。

今日は、その第一回目。三回の中では、一番の良席での鑑賞。後二回観るので、今日は極々サラリと触れて終わりたい。

登場するのが幕末に実在した人物が殆どだし、史実にほぼ忠実なので、時代劇を観ている感覚。モノノケとか妖術とか、はたまた派手なオチャラケや爆笑などは皆無。言い換えれば、極彩色溢れる雰囲気のいつもの新感線の舞台とは全く違い、終始モノトーンの世界が広がる舞台上。

森田くんの声がダミ声と言うか掠れ声なのは、デフォルトなのか、それとも今回の舞台で早くも掠れて来たのかは、普段の彼の声を知らない私には判断出来ないけれど、聞いている内に、もしかしたら岡田以蔵自身もこんな声だったのかも知れないなぁ、これも有りだなぁと思えて来た。身体をいつも前屈みに半分に折った様な姿勢で、スタスタスタッと早歩きで移動する姿も、あぁ本当にこんな姿だったのかも....と思えて来るから、彼はまさにはまり役なのかも知れない。いのうえ氏の大当たりの抜擢と言うか、観る目の正しさと言うか。芝居自体は下手だけれど、2008年現在に以蔵の姿形や声を再現出来ているとしたら、これはこれで一つの舞台として成立し得るだろう。

西岡徳馬さんや木場勝己さんが出て来ると、舞台が一気に締まり、空気感が変わる。彼らはしっかりした時代劇を演じていた。流石だ。

今回が初舞台と言う19歳の戸田恵梨香ちゃんは、初舞台とは思えない舞台度胸と演技力と舞台での居方。映像の彼女を知らない私だが、これからも舞台にドンドンと出て経験を積んだら、良い役者に成るだろう。

勝海舟役の粟根まことさんや坂本竜馬役の池田鉄洋くんが、予想以上のはまり役。醸し出す空気感がとても素敵で、出番が少ないのが勿体無い。

二回目は月末最後の週末。新感線の舞台は毎日が初日みたいに次々と演出が変わるから、どんな風になっているかが楽しみだ。

観劇後、時間が経てば経つ程に味わいが深く醸し出て来る今舞台。未見の方にも観て欲しい舞台だ。